トークに登場する人
ヒロト…都会に住む。動物が大好き。
ユウナ…田舎に住む。動物が大好き。
ハカセ…動物に詳しい。正体は謎。
トーク・スタート!
再導入という選択肢
再導入をめぐる論点
2. オオカミによる家畜への被害について
3. オオカミが日本の自然環境に定着できるかについて
4. オオカミがニホンジカなどの個体数調整に有効かについて
5. オオカミが他の生物に悪影響を与えるかについて
6. オオカミの個体数管理について
7. オオカミ再導入に必要なお金や人員について
賛成派の主張
人がオオカミに正しく接しているならば、襲われることはない。きわめて稀な例外があるのみである。狂犬病の発生やオオカミの人慣れを防げば、人身咬傷害の発生を防ぐことができる。
2. 家畜が襲われることはあるが、影響は小さい
オオカミがヒツジ、ウシ、ウマなどの家畜を襲う可能性はある。ただし、伝染病や事故などによる損失と比べると、オオカミの捕食による損失はごく限られている。
3. 定着できる
オオカミの再導入は、餌動物が生息する大面積の森林地帯ならば、どこでも可能。例えば、北海道には少なくとも約50,000平方kmのオオカミ生息適地が存在し、500~1000頭を収容することが可能である。
4. 有効である
オオカミはシカやイノシシの数を抑制する。アメリカなどでは事例もあり、生態系も回復している。奥山にオオカミが生息しても、そこに生息するシカやイノシシがオオカミを避けて長距離を移動し、里近くに出てくることはない。一方で、捕殺(狩猟・駆除)や侵入防止柵の設置などでは、シカやイノシシの数を減らすことはできない。これまで捕殺などで成功した事例は皆無である。
5. 悪影響はない
ツキノワグマやカモシカなど他の動物を襲うことはあっても、個体数を減少させるようなことはない。オオカミは日本では外来種ではなく、生態系にとって欠かせない存在である。
6. 管理は必要ない
オオカミは、自然生態系の摂理に従って、自分たちの増えすぎや減りすぎも自分たちで調節する。管理が必要になる事態は滅多に起きない。
7. コストは少なく、行政がやるべき
現在の狩猟などに基づくシカやイノシシの管理よりも、技術的にもコスト的にもほとんど問題にならない。民間団体ではなく行政が取り組まなければならない。
反対派の主張
カナダではオオカミによる人身事故件数は年平均0.56件であり、北海道における1980年代のヒグマによる年平均負傷者数1.1件と比べ、それほど低くない人身事故リスクといえる。社会がそれを受容するか疑問である。
2. 家畜が襲われることはあり、深刻な問題である
欧米では家畜被害が発生している。欧米と比べて畜産農家の経営規模が小さい日本では、相対的に影響が大きい。農家がそれを受容するか疑問である。
3. 定着できる
生息適地面積は人口密度や道路密度から試算すると、例えば、北海道では62,384平方kmで、624頭が生息できる。しかし、広い面積が必要で、市街地や耕作地はもちろん、山地など生息に適さない地域もある。
4. 有効ではない
オオカミ1頭あたり年間では51.1頭のシカを捕食すると計算され、シカの捕食率は約5%となる。この捕食率は、内的増加率0.19と報告されているシカの増加率より低い。少なくともオオカミだけでは、シカの数を減らすことはできない。アメリカなどの事例では、オオカミの捕食による効果は、他の動物による捕食や周辺地域の狩猟の影響もあり、正確に評価されていない。
5. 悪影響はありうる
鳥類や地上性動物が捕食され、生態系に何らかの影響をもたらす可能性は否定できない。キツネやタヌキなどオオカミと食性が重なる動物種も影響を受ける。アメリカではコヨーテの生息密度がオオカミの排他的行動によって減少したことが報告されている。
6. 管理は必要である
オオカミによる影響を監視しなければならない。オオカミ再導入が行われたイエローストーン国立公園などでは、発信機をとりつけるなど集中的なモニタリングが実施された。日本でも行動モニタリングと個体管理が必要で、オオカミの定着できる広大な面積で管理をするには困難が予想される。
7. コストは高く、民間団体がやるべき
オオカミ個体管理や家畜被害の補償制度の構築が求められ、お金はかかる。イタリアでの補償額は年間約2億である。管理主体は、公益法人あるいは行政のサポートを受けたNGO・NPOが主体となると考えられる。アメリカではオオカミによる家畜被害の補償はNGOによって行われている。
- オオカミの再導入にはさまざまな意見がある
・Q&A | 一般社団法人 日本オオカミ協会
・知床に再導入したオオカミを管理できるか | 知床博物館研究報告
・オオカミ (Canis lupus) の保護管理及び再導入事例について | 知床博物館研究報告
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